私自身は、小さい頃から実家で犬を飼っていたこともあって、ずっと犬派でした。思うに日本では周りに猫を飼っている人も少なく、知り合いが飼っていた猫と何度か触れ合う機会があったぐらいで、あまり猫に馴染みがなかった。この知り合いの猫も、可愛かったけど当時の私の目にはかなりムーディに映り、そこまで親近感を持つには至らず。野良猫は近所でよく見かけたような記憶があるけど、みんなハードコアな野良で形相も悪くほとんど近寄れないし、猫というと物陰からこっそり見ていたり、突然忍び寄ってきたりするイメージ、化け猫のイメージなんかもあって、犬に比べるとどうも心が許せないような気がしていたように思います。
それが英国に来てからは、一転して猫も大好きになりました。出会う猫の多くが人なつこく、猫好きの友人知人が多いせいもあるのかもしれません。こちらでは一般的に犬は非常によく躾けられていて飼い主にとても忠実。もちろん犬にもよりますが、多くは飼い主に忠実すぎて逆に他人と距離を置いているというか、親に「知らない人についていっちゃいけませんよ」と言われている子どものような感じで、身内と他人の区別をしっかりつけているような感じがあります(くどいようですが、もちろん犬によりけりで、誰にでも人なつこい犬もいっぱいいます)。しかしその点、猫はもっとユルくて、道端で見かける猫の多くが自由気ままでフレンドリー。仲良くなっても馴れ馴れしくなりすぎないところも何となく英国的な感じがしたりして笑。
ともあれ、犬か猫を飼おうという話はもうずいぶん前からしていて、昨年夏にローカルエリアにあるBattersea Dogs & Cats HomeとCelia Hammond Animal Trustというアニマル・レスキュー・センターを訪れて登録も済ませていました。日本でこういう機関にお世話になったことがないのでわからないのですが、動物愛護精神に溢れる英国では犬猫の里親を希望して登録すると、最初にセンターのスタッフが、こちらが希望するペットを飼える環境かどうかをチェックしに家庭訪問にやってきます。
夏のある日、まずはBattersea Dogs & Cats Homeのスタッフがやって来て、フラットの間取りなどを確認した後、手短かに生活や仕事状況などを聞かれました。私は基本的に家で仕事をしているため、ペットの世話もしやすく、その点では犬でも猫でも問題なし。ただ、うちのフラットはコンパクトで、しかも2階で庭がないので、犬だったら大型犬以外なら大丈夫だけど、猫の場合は家の中だけで生活が事足りる(運動量が少なくていい)老猫になる可能性が高いと言われました。私は実家で犬を飼っていた経験はあるけれど猫を飼った経験はなく、一方、ベンは庭のある実家で猫を飼ったことはあるけど犬は飼ったことがない。正直、飼うなら少しでも長く一緒にいたいという思いもあり、この時点ではやっぱり犬かなあと思っていたのですが、その後、猫をメインに扱っているCelia Hammond Animal Trustのスタッフが家庭訪問に来た際に、子猫を引き取って屋内飼いで育てるという選択もあると言われて、考え直しました。自分たちの都合で猫を外に出さないというのも、最初はどうなのかと思いましたが「引き取り手がいないばかりに殺処分されてしまう猫が数多くいる状況を考えれば、引き取ってインドア飼いしてもらうほうがずっといい」と言われて納得できました。また子猫からインドア飼いする場合は、2匹一緒に飼った方が猫にストレスがたまらなくて良いと勧められました。このスタッフさん、とてもいい人で、ほかにもいろんなアドバイスをしてくれて、話を聞き終える頃にはもうすっかりこのセンターからペアの子猫を引き取ろうという気満々になっていました。しかしこの時点で私たちは日本への帰国を数週間後に控えていたので、ロンドンに帰ってきたら再度連絡して具体的な話を進めましょうということになりました。
ところが日本から帰ってきたらMM騒動で家の中に毒餌を撒くことになったため、またしばらくお預けになり、そうこうしているうちにあっという間にクリスマスが迫ってきて、ウェールズへの帰省でまた家をあけることになるので(猫は環境の変化を嫌うので、犬のように一緒にどこかへ連れていくことはできないのね)年明けまで辛抱することに。でも実際にこの目で一度猫たちを見てみたいと思い、クリスマス帰省前の週末に、うちから徒歩圏内のCelia HammondのLewisham支部のオープンデーに足を運んで、里親募集中の猫たちを見に行きました。そこで思ったのは、ホームページの写真で見るのと実際に目の前で彼らの姿を見るのとでは印象がかなり違うということでした。写真ではおとなしそうに見える猫がかなり野生的な感じだったり、その逆もしかりで、まあ、人間だって写真と実物じゃ違うってこと多いもんね、それと同じですな。
そして年が明け、どうにか無事に初めての英国での確定申告を済ませたところで(英国では1月末が〆なのです)、再びCelia Hammondのスタッフに連絡して、いよいよ本気で猫を選びに行きました。ケージに入れられているたくさんの猫の中から、事前にスタッフが私たちの条件に適った生後半年ぐらいまでのペアをピックアップしておいてくれたので、順番に見て行きました。どの猫も間近で見ると可愛くて愛着が湧いてしまい、見れば見るほど選ぶのが難しくなっていく。さんざん悩んで話し合った結果、特にベンが惹かれたタビーの兄弟猫に心を決めたのですが、まだ家に猫を迎える準備が整っていなかったので、とりあえず予約して1週間後に引き取りにきますと言うと、数日以上はキープできないので準備ができた時点で再度連絡するようにと言われました。そしてその週末にペットショップで猫用品を買い揃えたのですが、そうこうしているうちになんとこの兄弟猫が他の人に引き取られてしまい、再びふりだしに戻るはめに……。
今までウェブサイトでは最寄りのLewisham支部のページしか見ていなかったので、うちから電車で15分ぐらいのCanning Town本部のページもチェックしてみたところ、一匹すごく気になる猫の写真を見つけたので、その猫に会うべくどうにか連絡を取り付け、平日の夜Canning Town本部へ足を運ぶことになりました。
さっそく気になっていた猫の名前を伝え、猫舎に案内されたのですが、実はまだ一般に公開されていないという子猫もけっこういて、その中から何匹かおすすめのペアを紹介されました。やっぱりそれぞれの猫の性格もあるし、またペアで引き取るとなると猫同士の相性もあるので見定めが必要です。長居してさんざんいろんな猫と触れ合った後、最終的に2ペアに絞ったのですが、その日はどうしても決められず、一晩考えることに。といっても帰り道に話しているうちに心が決まり、翌日Celiaに意思を伝え、いよいよ週末に引き取りに行くことになりました。
ちなみにこちらのスタッフは基本的にボランティアですが、みなさん本当に親切で、猫への愛をひしひしと感じます。獣医も兼ねているセンター内の仕事のみならず、ロンドン市内の野良猫の救助活動なども行っていて、文字通り朝から晩まで働いているのです。しかもCanning Town本部とのやりとりで対応してくれたのは、なんと創業者のCeliaさんご本人だったのですが、毎日本当に忙しそうな中、寛大にいろいろ対応してくれて感激でした。
そして迎えた土曜の朝。再びCanning Townのセンターへ足を運ぶと、ロビーは猫を引き取りに来ている人たちでいっぱい。聞いたところによると、大抵いつも週末に40組ぐらいの引き取り人が来るそうです。ちなみに引き渡される猫はすべて去勢済みで、身元確認のためのマイクロチップも挿入されています。引き取りにあたっては寄付を納めるのが通例となっていて、1匹につき少なくとも50ポンドが目安として提示されています。私たちは2匹ということで、感謝の気持ちも込めて、合計150ポンドを寄付しました。すべての手続きを終えた後、持参したケージに2匹の子猫を入れて電車で自宅へ。引き取ったのはオスとメスの生後約10〜12週間のきょうだい猫で、オスの方は全然物怖じせずにいるのに、メスの方はかなり怖がって震えっぱなしでとても可哀想でしたが、どうにか無事に家まで連れて帰りました。ケージを持っていると、通りすがりの人がみな中を覗いてはニコニコしたり、電車の中でも話しかけられたり。まあ私も逆の立場だったら同じことするなあと思い、動物と赤ちゃんにはみんな弱いんだよねと改めて思いました。
家に着いてケージを開けると、オスのほうはすぐに外に出てきてウロウロ。メスのほうはかなり怯えていて、なかなか出てきませんでした。センターのスタッフに、猫が環境に慣れるまでは、まず1つの部屋から始めた方がいいと言われていたので、とりあえず私が普段仕事しているスペアルームから始めることにしたのですが、実はこの部屋、猫にとっては隠れ場所がいっぱい。しばらくしてやっとメスも出てきたと思いきや、すぐにタンスの下に潜り込んでしまいました。そうこうしているうちに、オスの姿も見えなくなって、こんな狭い部屋なのに全然見つからないって、どういうこと!? と、狐につままれたような気持ちになりましたが、いやーほんと彼らは隠れ上手で、思いもよらないところから家具の隙間に入り込んで隠れているのでした。最初は全然物怖じせず、フレンドリーに見えたオスの方も、やはり急な環境の変化で興奮状態なのか、隠れているところを覗き込んで声をかけたら、すごい怖い顔でシャーッと威嚇してきて、さすがに私、これにはしょんぼりしました。反抗期の子どもに対応する親ってこんな感じなのかもね……みたいな笑。
この日の午後の彼らはもう、キャパオーバー状態だったと思われ、最終的には2匹ともタンスの下で爆睡。あまりに身動きもせず静かに寝ていて心配になるほどでしたが、ネットで調べたところ、こういうことは初日から慣れるまでの間によくあると書いてあったので(猫が隠れ場所からついに出てくるまで28日間も待った、というブログも見ました笑)ひとまず様子を見ることに。すると夕方になってまずオスの子が出てきて、早くもオモチャで遊び出しました。メスの方は夜までほとんどずっと寝ていて、ちょっと顔を出してもすぐにタンスの下へ逆戻り。でも徐々に慣れてきたようで、翌日にはやっと出てきて、元気な姿を見せてくれました。
というわけで、かなり詳細にわたって長々と経緯を綴りましたが、ここでやっとご紹介。こちらが男の子のタビー猫、その名もTugboat(愛称Tamtam)です!
そしてこちらが女の子のブラック&ホワイト猫、Rumbelow(愛称Rummy)!
きょうだいとあって、どちらも少し毛足が長く、胸元と足元が似ています。てゆーか、ほんとにもう、めちゃめちゃ可愛いです!!!
見てください、このあどけない表情を♥ |
癒しフォト:テーブルの下の椅子の上で昼寝中 |
お気に入りのお魚を手に得意気なタムタム |
悩殺乙女♥ |
えーと、探してたのはどの本だったっけな? |
本棚の上でサボテンとともにチーズ |
自分の姿を鏡を見てギョッ!とするラミー |
上から猫文字で「M」「J」(マイケル・ジャクソン)……ホワッツ・マイケル!? |
晴れた土曜日の和みフォト |
こちらが彼らのお気に入りのお魚とマウス。毎日これらを巡って 取っ組み合いのケンカをしてます |
■today's disc:Cheap Date/Cat Smell
ベンが以前在籍していたThe Give It Upsの、ベン以外のメンバー+PAMsでもおなじみのMadsから成るバンド。ベースを弾いていたMadsがデンマークに帰っている間、私がベースを手伝うことになったものの、このところしばらく活動していなかったのですが、最近またボチボチ活動を開始して、来週、再来週と久々にライブがあります。メンバーが猫好きというだけで、特に猫について歌っているわけではありません。