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2018年5月8日火曜日

ケンティッシュ・ホリデー

早くも5月、もう一年の3分の1がぁあっ、と毎回同じような出だしで申し訳ありませんが、いやー。

今年は冬が長くてずっと寒かった気がしますが、そんな中、急にぱぁっと晴れて気温も上昇、いきなり30℃近くまでいったかと思いきや、またぐんと気温が下がって5月なのに6℃とかでなんと暖房入れたり、かと思いきや、先週末からまた気温が上がって夏日という、なんだか躁鬱な人みたいな天気です。とにかくつい最近まで寒くて気が滅入りっぱなしで体もずっと硬直気味、やる気が起きない……(寒さのせいだけじゃないかもですが)。でも太陽が出て気温が上がっただけで気分も体調も上がったので、やっぱり天気の影響は大きいなあとしみじみ思いました。私は断然暑い気候のほうが好きなので、なぜこんな涼しい国にいるのか!? と時々真剣に思います。一年を通して涼しくてドライなのも過ごしやすいと思う時もありますが、最近はまた、暑いのが恋しい、汗ダラダラかきたい、と思うことのほうが多いような気がします。

さて、つい先日、はや結婚4周年を迎えて、例年のごとく記念旅行に出かけてきたのですが(当ブログはすっかりホリデーブログに成り果てていますが……)、運良くこの旅行中はお天気に恵まれました。3泊4日でまたしてもイギリスの千葉、ケント州に行ってきたのですが、特に最初の2日は見事な晴天、半袖でウロウロできるウレシさったら。純粋な休暇旅行は久しぶりだったので楽しかったです。

ケント州とざっくり言いましたが、今回実際に訪れたのはカンタベリー(Canterbury)とウィスタブル(Whitstable)です。ベンも私も行くのは初めて。カンタベリーというと、日本人の私はチョーサーの『カンタベリー物語』がすぐに思い浮かびますが、私の周りのイギリス人(というかベンとポール)にとっては「トマス・ベケットが暗殺された場所(カンタベリー大聖堂)」というのが真っ先に思い浮かぶことのようです。ウィスタブルはオイスターで有名なシーサイドタウンですね。前から一度行ってみたいなあと思っていた場所でした。ちなみにこのあたりは以前訪れたマーゲイトにも近く、ロンドンから電車で1時間〜1時間半ぐらいなので日帰りも可能な距離です。そこにあえて3泊という贅沢プラン(企画者ベン)。今回はカンタベリーに1泊、ウィスタブルに2泊しました。

■1日目

朝11時すぎにセント・パンクラスを出発、お昼すぎにカンタベリー・ウエスト駅に到着。そこからまずは歩いて10分ほどのB&Bへ。チェックインにはまだ早すぎる時間だったのでフロントでバッグだけ預けられればと思っていたんだけど、オーナーがとても気さくで「まだ完全には部屋が準備できていないけど、入って荷物置いちゃっていいよ」と言ってくれて、口頭で簡単にチェックイン。肝心のお部屋は開放的でバスルームも広いし、隅々まで行き届いててとてもいい感じ♡

というわけで荷物を置いて、さっそくタウンセンターへ向かいました。お腹がすいていたのでとりあえずランチしようということになり、適当に良さげなカフェ「The Refectory」へ。しょっぱいものが食べたいんだけど、ボリューム大のバーガーやサンドイッチはちょっとなぁ、ちょこっとつまみたい程度なんだけどなあ……なんて延々悩んでいるうちにスタッフが注文取りに来てしまい、ああどうしよう早く決めなきゃ、と焦ってなぜかチョコバナナ・パンケーキを注文してしまった。普段あんまりこういうことしないんだけどなあ。なんで「もうちょっと待ってください」って言わなかったのかしら、、、甘いものが食べたかったんじゃないのに何やっとんだ私は! と後悔し始めた頃、こんなのが来てしまいました。
5段重ねとは思ってなかったので、ウワーッどうしよ。
でもバターもメイプルシロップもかかってないので少々物足りない…
バーガーやらスープやらを食している近くの席の人たちを横目に見て「あのぐらいのサイズならイケたかも」なんていつまでも諦めの悪い気持ちを引きずりながら、満たされない気持ちでパンケーキを平らげたのでした。パンケーキ食べたくて注文してたら、もっと味わえただろうに、うぬー。カフェ自体はナチュラル志向のイマドキ風、でもそこまで気張ってないホームメイドな感じでよかったです。食べ物みんな美味しそうでした。

気を取り直して再び散策開始。ウエストゲートを越えてハイストリートへ出ると、天気のいい土曜の午後だけあって混雑気味。古着屋、レコード屋、チャリティショップなど、目に入ってくるおなじみのチェックポイントにちょこちょこ立ち寄りながら、大聖堂のほうに向かいました。30年ほどここに店を構えているという古着屋さんのオーナーの中年女性が「昔はうちみたいな個人商店がいっぱいあったのよ。でも今はみんな飲食店になっちゃった。それとアメリカン・スイーツのお店がなぜかいっぱい」と言っていたんだけど、確かにアメリカン・スイーツのお店がやたら多い。なぜだろう? あまりに多いので、実はコミュニズムのような感じで全体の儲けをみんなでシェアとか、そういうシステムだったりして、なんて冗談交じりにベンと話していたのですが。それにしてもカンタベリーの個人商店(主にレコード屋と古着屋ですけど)のオーナーは、みなさんとてもよく喋る方々でした。個人的にはこれといって目ぼしいお店はなく、チャリティショップも数は結構あるけれど、服飾雑貨系の1軒と古本系の1軒を除いてはランダムな品揃えのところばかりで、買い物にはあまりそそられませんでした。

世界遺産でもある英国国教会の総本山カンタベリー大聖堂は、さすがに壮麗で見事でした。大聖堂についての歴史などは、世界遺産オンラインガイドに詳しく書かれているので、興味がある方はこちらをどうぞ(記事中、ケント州が「ケンタッキー州」になってますが)。入場料が12.50ポンドとややお高めですが、ウェブサイトによれば維持費に一日約1万8000ポンドほどかかるそうなので、寄付金ですね。

正面ゲート
内部はかなりの広さ。ここは入ってすぐのメインホール。
天井から吊られているのは現代アーティストの期間限定の展示

ステンドグラスの美しさにも目を奪われます
とにかく天井が高い。建築についてはよくわからないのですが、建物の内部が
何層にも分かれているようで、広がりと奥行きを感じます。ベンいわく、礼拝者のスピリットが
天に昇っていくようなイメージを喚起させるつくりなんだとか
メインホールの奥に進むと、歌隊席のエリア。その先が司祭席で、一番奥が礼拝堂。
礼拝堂にはロウソクが1本灯っていて、その下にベケットが埋葬されているそう



歴史を感じる身廊も雰囲気があります

ほっと和める感じの裏庭
ひんやりとした空気が漂う地下聖堂は撮影禁止なので写真が撮れませんでしたが、とても雰囲気があり必見です。イベントなどもよく開催されているらしく、その日の夜もこの地下聖堂でピアノのコンサートが開かれる予定で、私たちが訪れた時にちょうどリハーサル中でした。そのエリアは立ち入り禁止だったのですが、ピアノの音が聖堂内に響き渡っていていい感じでした。

そういえばベンが、カンタベリー大聖堂のことを「(ウェールズの)聖デイヴィッド大聖堂を大きくしたような感じ」と言っていたのですが、確かにとてもよく似ています。ホールのつくりとか、天井の高さとか、全体の構造とか。そこで感じる空気さえも。

普通に敷地内を一周したところで、ちょうど閉館時間。細部の細部までじーっくり見たわけではありませんが、それでも1時間ちょっといたでしょうか。外に出ると、すでに涼しくなってきていたので、薄着だった私たちは一度宿に戻ることにしました。途中、宿近くのレコード屋、その名もわかりやすく「Canterbury Rock」に閉店間際に滑り込んで、ざっとレコードをチェック。長髪ヒッピー風のオーナーの見た目が物語るとおり70年代ブリティッシュ・ロックが中心の(というかそれ以外はあまりない)品揃え。ロングリブ、カンタベリー・ロック!
私はこれキングコングだと思ったんですけど、どう思います?
宿に戻ってちょっと休憩した後、上着を持って再び外出。まずは宿の近所で見かけた歴史がありそうなパブ 「The Unicorn」(17世紀の建物とローカル・エールが自慢の、常連が多そうな好みのタイプのパブでした)でビールを一杯やってから、大聖堂近くのカジュアルなイタリアン・レストラン「Posillipo」へ。土曜なので混んでいて、予約していなかった私たちはテラス席へ通されました(ちょっと寒々しいけど上着を着たままならまあ大丈夫だった)。肝心の食事は結構おいしかったんだけど、ガーリックが強めで翌朝まで引っ張ったのが、後々まで胃腸の調子に響くことになろうとは、このとき知る由もなく……。とはいえ、やっとしょっぱいものが食べれたので満足して、その後、再び宿の近くにあった最近流行りのヴィーガン・パブ「Monument」に立ち寄り、締めくくりのエールを飲んで、その日は終了。

そういえば、ウエストゲートの近くに「The Marlowe」というシェイクスピア劇などが催される劇場があるのですが、この劇場はシェイクスピアと同世代で、彼に多大な影響を与えたといわれるカンタベリー出身の劇作家で詩人のクリストファー・マーロウにちなんでその名前が付いています。で、このクリストファー・マーロウという人、去年のクリスマスにBBC2でスペシャル放映されていた「Upstart Crow」(これがめっちゃ面白かった。自宅にテレビがないので全然知らなかったのですが、2016年にシェイクスピア死後400年を記念して企画されたシットコムで、2017年に第2シリーズとこのクリスマス特別企画が放映され、今年もシリーズ3が放映される予定らしい。脚本があの「Young Ones」のベン・エルトンだったのを知って納得)を見ていた時に、キット・マーロウという、このクリストファー・マーロウをモデルにしたキャラクターが出てきて、私は初めてその存在を知ったのですが、かなり興味深い人物なんですね。しかも彼は29歳にして、ロンドンはDeptford(うちの近所)のパブでお勘定の支払いをめぐって喧嘩になり、顔面をナイフで刺されて即死という、衝撃的な最期を迎えています(彼の諜報活動やその他さまざまな謎めいた行動により、この死も陰謀だったというのが定説のようですが)。
マーロウ劇場の前庭に立つクリストファー・マーロウの記念碑

ご覧の通り、没:Deptfordって書いてあります。
それにしてもDeptfordのパブって一体どこだろう、
Birds Nest(私も何度かライブしたことがあるパンクパブ)だったりして笑

The Marloweの前にて。偽物はどれだ!? 

ん?

んん?

んんんんー?
夜は夜で不気味でした

ところで話は脇道にそれますが、私のまわりのコミュニティ(主にDIY音楽シーン)ではジェンダーやLGBT問題への偏見や差別をなくすように、見た目とか生まれつきの性別とは関係なく自分が「He」か「She」か「They」かは自分で決めればよいという考えで、例えばSNSなどのプロフィール欄にその「自分で決めた性別」を書いている人も少なくないのですが、私は最近までこの「性別を自分で決めて公表する」という行為が逆に性のあり方を定義している気がして、正直いまひとつ自分の中で完全に消化できていない部分があったのです。しかもこの自己申請の性別というのは性的指向に限ったことではないわけで、女性として生まれて性的には男性に惹かれるけど自分は「She」じゃなくて 「They」だという人は、何をもって自身を「They」としているのか、とか、あえて自分の性別を示すことはジェンダー問題への配慮の意思表示と捉えればいいのか、とか、いろいろ思ったりしていました。でもこの日の夜、宿でテレビをザッピングしていたらマッチョなアクション系の映画ばかりを放映しているチャンネルを見つけ、そのチャンネルの名前が「Movies4Men」だったのを見て軽い違和感を覚えた瞬間、なにか急にぱっと閃いた気がしました。こういう、些細ではあるけれど型にはまっている決めつけに違和感を覚えることがきっかけでもいいんだろうな、結局は小さな抵抗感の積み重ねなのかもなあ、と。私自身は性別を聞かれたら今のところ「She」と答えていますが、「They」でもいいのかもしれません。

■2日目

朝食をとりに行ったダイニングルームで、他の宿泊客4、5組と遭遇。B&B内はとても静かで夜も物音ひとつしなかったので、私たちしか泊まっていないのかと思っていたけど、実は満室だったのかもです。朝食は3種類から選べ、前夜のうちにオーダーしておくシステム。私はフル・イングリッシュ・ブレックファストを選んだのですが、これがとっても美味しかった! ソーセージとベーコンが今まで食べた中でもトップかも。ベーコンはいつもちょっとしょっぱすぎだり、生臭さが気になったりしがちなので普段あまり好んで食べないのですが、ここで食べたのは地元産のでアンスモークだったせいか、とてもおいしかった。卵も完璧に半熟だったし、言うことなしでした。

しかし昨晩のガーリックとボリュームたっぷりの食事がまだ消化しきれていないうちにフル・ブレックファストを食べてしまったためか、その後の数日間ずっと胃腸の調子が悪かった。。。そんなに死ぬほど食べたつもりはなかったんだけど、基本的に消化器官が弱ってんのよね、トホホ。   

宿をチェックアウト後、まずはカンタベリー城に向かいました。小さいお城っぽかったけど、訪れた街にお城があるとなんとなくいつもチェックしているので、今回も行ってみようということになったわけです。

カンタベリーにはウエスト駅とイースト駅があり、城はイースト駅に近いのですが、宿からだと歩いて20分かそれ以上かかるので、仕方なく荷物は全部持って出ました。イギリスの駅にはコインロッカーはもちろん、荷物預り所もまずないので、こういう時、本当に不便です。 天気がよかったのだけが幸い。しかし城に着くと、なんと落石のため閉まっていた。。。

城の後ろ側の壁から落石しているようでしたが
(フェンスの向こうに石が落ちているのが見えますね)、
人が通る道路に面している側は大丈夫なのか?という心配も
とりあえず正面側から一枚撮っときました


仕方なく諦めて、ベンがチェックしていた古本屋へ向かうことに。道中「Vinylstore Jr」という、比較的新しそうなレコード屋も見つけたので、立ち寄ってみました。旅先のレコード屋訪問はいつも楽しくて好きです。思わぬ一枚に出会えるチャンスというのもありますが、特にインディペンデントなお店の場合、オーナーの趣味というか、辿ってきた音楽経緯がストックに表れているように思え、「この人はこのあたりはよく聴いてたっぽいけど、このへんはあまり興味なかったのかな」なんて想像できたりして面白い笑。

古本屋「Chaucer Bookshop」はヴィンテージ本をキュレートして揃えているような古本屋さんで、すてきなカードなんかも売っていました。ハードカバーの本がメインだったので、基本チープなペーパーバック専門のベンには収穫がなかったようでしたが、いろいろ眺めるだけでも楽しめました。


児童書コーナーにあった一冊。猫人間!? の絵に釘付けになりました
カンタベリーではシンプルで覚えやすい通り名が目につきました 





そしていよいよ、カンタベリー・イースト駅から電車でウィスタブルへ。たった2、3駅なんだけど、乗り換え接続があまりよくないので、30分ほどかかりました。ウィスタブル駅から宿泊先の海辺のホテルまでは歩いて15分ほど。途中、住宅街を抜けていくのですが、すてきなおうちが立ち並ぶ中、珍しく庭を石庭にしている家があり、思わずパチリ。
イギリスの個人住宅では初めて見ました
強い日差しが降り注ぐ中、やっとホテルに到着。天気がよかったのでテラス席でおいしそうにビールを飲んでいる人が多く、フロント周辺とバーエリアも開放的、そして肝心のお部屋も海が見えて快適! 一気にホリデー気分が高まりました、ワーイ。

チェックインして一息ついた後、ひとまずタウンセンターの方へ向かって海沿いを歩いて行くことにしました。ビーチはデヴォンでもよく見たシングルビーチ(砂ではなくて小石のビーチ)ですが、内陸に向かって芝生の丘が形成されているので、ビーチと公園の両方があるような感じで犬は大喜びですね笑。


水平線に見えるムーミンのニョロニョロみたいなのは何かしら? 
ベンは「マンセル要塞(第二次大戦時に作られたイギリスの対空要塞跡)じゃない?」と言ってたけど、
ちょっと形が違うような。洋上発電か何かでしょうか。
そしてビーチの前には「ビーチハット」と呼ばれるロッジがずらーっと並んでいます。英国南東部の海岸によく見られるこのビーチハットは、言ってみれば地元の人たちが個人で所有している海小屋のようなもので、物置として使っている人もいれば、そこでBBQしたり、海風にあたりながら本を読んだり、日光浴したりしている人もいて、みな自分なりの用途で使っているようです。ちょうど海日和だったこの日は、ビーチハットに家族や友人たちで集まって飲み食いしている光景が多く見られました。



海岸沿いにずらーっと並ぶカラフルなビーチハット。サウスイースト・コーストの特徴的な光景のようです
ハーバーまでたどり着くと、多くの人で賑わっていました。さすが晴天の日曜の午後。名物のオイスターやとれたてのシーフードを売っている屋台なども出ていて、そそられます。私は生牡蠣は全然と言っていいほど好きではなく(カキフライは大好きなのですが)日本ではまず食べないし、ベンなんかもってのほかで全く興味なしなのですが、目の前で殻が砕かれ、供されるオイスターやらシュリンプ・ポットやらを見ているうちに、1つぐらい食べてみようかな、という気になってきました。

あっちこっちでこのように牡蠣がさばかれ、多くの店の前に行列ができていました
全く興味なしでそっぽを向いているベンを尻目にオイスターに釘付けになっていると、突然「あれっ!何してんの!?」という声が。振り向くとそこには、メタリカのカバーバンド・メイトでもあるWitching Wavesのマークとエマが! こんなところでロンドンの友達にバッタリ会うなんてビックリでしたが、考えてみたらウィスタブルはロンドンからさほど遠くないのでそんなに不思議じゃないか。どうやら彼らは昨日までツアーでバンを借りていて、一日余ったのでその車を使ってちょっと日帰りで海辺にでも行くか、という話になったとのこと。それにしても旅先で偶然バッタリって、なんか楽しいですよね。
お約束でみんなで一枚
ともあれ、どうしてもビールが飲みたくなったので、目に入った手近なレストラン「Whitstable Oyster Fishery Co.」に入り、テラス席でビールだけ飲めないかと尋ねると、「飲むだけなら2階ね。広々としててとってもいいフロアなのよ」と言われ、テラスで飲みたかったけどまあいいか、と2階に上がると、うわーーーーすごい。言われたとおり、めっちゃ広々とした贅沢な空間、しかも客があまりいない。ソファ席もいくつかあるのに、ほんの数人の客はみんな海を見渡す窓際のカウンター席で飲んでいました。もちろん私たちもあいているカウンター席へ。いい眺めだー! そしてビールがめちゃうまいっ! 勢いづいた私は生牡蠣、いっちゃいました。

ここ最近で一番のビールでした


生牡蠣は1ピース£2.50でした。目の前の海の浅瀬で養殖しているそうです。
とぅるるっと口に滑り込み、なかなかイケたよ(でも後日まわりの友人に「生牡蠣を食べた」と言うと、
誰もが「ウェーッあんなのよく食べるね」という反応だった)

一方ベンはエールとビクトリア・スポンジ笑
    午後のひとときを満喫した後、タウンセンターへ足をのばしてハイストリートを少し歩いてみましたが、そろそろお店も閉まる時間になっていたので、じっくり見るのは翌日に回すことにして、夕飯に予定していたホテル近くのフィッシュ&チップス店まで30分前後の道のりを歩いて行くことにしました。途中、ウィスタブル城の近くを通ったので、午前中にカンタベリー城を見逃したことだし、と、立ち寄ってみました。お城といっても1790年代にピアーソン家という一家が住んでいた邸宅ということらしく、現在はウィスタブル城トラストという財団によって管理され、ウェディングやパーティーなどのイベント会場として公共利用されているようです。お庭がなかなか素敵でした。どうやら日中にフリマか何かが開催されていたようでした。
                                                                                                                                                                    さらにしばらく歩いて、やっとお目当のフィッシュ&チップス店「Ossie's Best Fish and Chips」に着いたと思ったら、なんとレストランは休業中。しかしその横のテイクアウェイ・コーナーは営業中で、行列ができていました。テイクアウェイして目の前のテラス席で食べている人たちもいたので、私たちもそうすることにしました。評判どおり、伝統的なタイプのフィッシュ&チップスでとてもおいしかったです。タラの身も肉厚で、ちょっとハドックに近い歯ごたえでした。
                                                                                                                                                                    食後はホテルに戻って館内のパブで軽く飲みました。ウィスタブル・ベイにてローカルエールのウィスタブル・ベイをタップで飲む。これぞ! というわけで2日目終了。

部屋から見えるサンセットがため息ものの美しさでした

■3日目

前日までの夏日はどこへやら、この日は気温が下がって本来の涼しい気候に逆戻り。天気はそれほど悪くなかったですが、肌寒くてコートが必要でした。

朝起きるとちょっと胃がもたれているような感じ。外食続きなところにフィッシュ&チップスの脂でトドメを刺されたかと思いましたが、それでもお腹は空いている。なのでいやしい私はメニューを見るとなんだか食欲が湧いてきて(しかも朝食無料だし)、ついベネディクト・マフィンを頼んでしまったのですが、やめとけばよかった。。。この日は夜まで胃もたれと格闘するはめになってしまいました。

朝食後はまた20分ほど歩いてタウンセンターへ。インディペンデントなお店が並んでいるけれど、ヴィンテージショップと呼べる店は1、2軒しかなかったし、服飾雑貨系ショップはみなシーサイドによくある感じの中年向けのお店ばかりで、カンタベリー同様、買い物欲はそそられませんでした。それでもローカルなオーガニック製品を扱うカフェやショップ、レコード屋、チャリティショップなどを見て回ること数時間。ウィスタブルにも「Oxford Street Books」という古本屋の良店があり、案の定ベンは時間かけて見ていたわけですが、店内のレイアウトや装飾、品揃えなどからして、以前このブログでも紹介したウェールズの古書街Hay-on-Wyeにあってもおかしくなさそうな、充実した古本屋さんでした。
オイスター&ビネガー味のケント産ポテトチップス。
オイスターの味はしなかったけど、普通にうまかった 
アーティスティックな古本屋の看板



内部はいくつもの小部屋に分かれていて、それぞれの部屋に
本がジャンル分けされていました。地下フロアも広々、充実

道で見かけた昔ながらの看板。オロナミンCの
ホーロー看板とかを思い出すような(そんな古くないかな)
 小腹がすいてきたけれど胃腸の調子がよくない上に記念日ディナーを夜に控えていたこともあって、ガッツリは食べたくない。そんな状況の時、イギリスではいつもほんとに店選びに困ってしまうのですが、そういう時はまあ大抵カフェに入ることになるのが常でして、またしても周辺にあった手頃なカフェ「Revival」に入ってみたわけです。

そこはちょっとDIYスペースのような感じでコミュニティ経営(?)のカフェらしく、内装はポップな60s風、スタッフはとてもフレンドリーだし、レコードを持ち込めばかけてもらえるというすてきなカフェ&アイスクリーム・ショップなのですが、「本日のスープ」がニンジンと生姜のスープだというのでそれを注文したところ、出てきたのはどう考えてもトマトスープ。それもトマトソースのような味の濃いスープ……。なんか思っていたのと全然違ってガッカリ、食もあまり進まず(ベンは結構気に入って私の代わりに食べていた)。というか、最初の一口か二口で「ニンジンの味も生姜の味もしないんですけど」と文句言えばよかったんじゃないかと思って、ベンにそう言うと「あっちの壁に貼ってあったチラシに『安くおいしく料理するレシピとコツ』が書いてあって、『困った時はトマトと玉ねぎを投入すれば大抵どうにかなる』みたいなことが書いてあったから、これもそれに従ってつくってるんじゃない」と言われて驚愕。貧乏学生レシピかい! でもなんか微笑ましくなって文句言う気もすっかり失せました。こんなんばっかりですイギリス生活(笑)。
パステルカラーのポップな店内

ベンが注文したシェイクも果汁たっぷりでおいしかったけど、
シェイクというより、私が毎朝家でブレンダーでつくっている
フルーツジュースみたいな感じかな、という笑
さて、この後、再び海の方へ向かい、今回ベンの「やることリスト」に入っていた、俳優ピーター・クッシングの思い出ロケーション巡りへ。ベンが大好きなピーター・クッシングは生前ウィスタブルに住んでいたそうで、家が残っているほか、お気に入りだったカフェや海辺のビュー・スポットなど、関連の場所がいくつかあるとのこと。ウィスタブル・ミュージアムにピーター・クッシングのセクションもあるということだったので見る予定でいたのですが、残念ながら私たちがいる間はミュージアムが閉まっていて入れませんでした。

まずは彼がよくこのベンチに座って海を見ていたという「クッシング・ビュー」へ。海沿いに適当に歩いて行くだけで、地図なしでも簡単に見つかりました。

自宅だったという家もその先を少し歩いたところにすぐ見つかりました。今は誰が管理しているのかわかりませんが、日常的には使われていないように見えました。ベンいわく、ピーター・クッシングは奥さんに先立たれてからかなり憔悴してしまい、一時は彼をサポートしていたあるファミリーと一緒に暮らしたりもしたそうです。そういう背景を聞いたうえで家を目の前にすると、またいろんな思いがよぎってしまいますね。

おなじみのブルーのプラークが壁にかかっていました
その他、彼がよく行ったカフェレストランは、目の前は通りましたが中には入りませんでした。あ、それとハイストリートにあったウェザースプーン・パブも、このとおりピーター・クッシングにあやかっていました。


ディナーまでまだちょっと時間があったので、海辺を歩いていて見つけたパブ「The Old Neptune」で軽く喉を潤すことにしました。このパブがまたいい感じで、店内に飾ってあったテレグラフ紙の記事によれば、英国ベスト・サマー・パブ(だったかな?)に選ばれていたようで、「特に凝ったアイデアがあるわけではないが、晴れた日にこのパブのテラスでビールを飲むと地上の楽園とはこのことかと思える」みたいなことが書いてありました。外に目をやると、確かにこのパブはまさに「ビーチの上」に立っていて、目の前がどどーーんと海!なので納得でしたが、残念ながらとても外に出てビールを飲みたいと思うような気候ではありませんでした。でも温かみのある店内も居心地がよく、時間が早かったせいか混雑しているというほどではなかったにせよ、ローカル客が途切れることなく訪れていました。後から知りましたが、19世紀初頭から続く歴史あるパブで、地元の人たちには「Neppy」の愛称で知られているそうです。
西陽が差し込む温かみのある店内

この後のディナーを考え、私はハーフのラガーで我慢
 夜7時半を回ったころ、事前に予約していたハイストリートにある創作ビストロ「Samphire Whitstableへ。真夏のような天気で誰もが外に出て遊んだ週末が明けて、寒々しさが戻った月曜ということもあってか、比較的静かな夜のようでした。私は腹具合を考えて前菜はスキップし、メインの白身魚と魚介とカボチャのチャウダーを選び、ベンはハルミチーズを使った前菜と、味噌と発酵チリを使ったハッシュブラウン、パクチョイ添えというアジアンテイストなメインを選びました。チャウダーは私の壊れかかった胃腸にも優しい味で、今回やっと自分に合った正解なメニューを選べたという感じでした笑。ベンが頼んだハッシュブラウンを少し味見させてもらったところ、甘辛味噌が程よくきいていて、これもとてもおいしかったです。
料理の写真は今回撮らなかったのですが、
テーブルのお花がとてもきれいだったので食事前に一枚
お腹に優しい食事だったといえども、まだまだ胃もたれが完全に治ったわけではなかったので、食後に飲むのは控えました。ホテルのパブがまたなかなか居心地よかったので少々残念だったけど、またの機会に!

■4日目

最終日、カンタベリー・ウエストから夕方5時半に出る電車でロンドンに戻る予定だったので、逆算するとウィスタブルにいられるのは3時半ごろまで(実はウィスタブルからロンドンへの直通電車もあるのですが、ベンがちょっと計算違いをしてしまい、カンタベリーに一度戻るという、かなり遠回りのルートで切符を買ってしまっていたのでした笑)。10時にチェックアウトし、荷物をフロントに預けて、そこからバスで15分ほどの小さな海辺の町ハーンベイ(Herne Bay)へ行くことにしました。知らない土地でバスに乗るのって好きです。

さてこのハーンベイ、街としては今回の中で一番好みでした。寂れ具合がとても良い。というか、寂れてるようで寂れていないんだな。数軒あるヴィンテージショップやジャンクショップの質も好み。ちょっとマーゲイトにテイストが近いかも。規模はだいぶ小さいですが。バス停降りて最初に目に入ったアンティーク・エンポリウム「Bay Emporium」の外観だけで「お、これはきた!」という感じでした笑。

このいっぱいいるカートに乗ったわんこたちは一体。。。よく見るとパジャマ姿のカバくんも

後ろ姿がまたなんとも

ヌードドローイングと子羊の組み合わせもなかなかオツ

珍しいカンガルーの親子。。。

片耳でバンザイ


ミニクッション、買おうか迷ったけど結局買いませんでした(猫なら買ったかも)
このほか訪れた何軒かのお店もみな個性があってよかった。特に「Alamode Vintage」というお店が入っている建物はハーンベイで2番目に古いらしく、オーナーのエリィさんが買い取って住居にもしているんだそう。おそらく昔はベーカリーだったのか? 壁にはめ込まれた鉄製のオーブンのようなものが残っているのも味わいがありました。エリィさんがまたとてもフレンドリーな人で、私たちが記念旅行で来ていると言うと、「ハーンベイまで来てくれて本当にありがとう。じゃあ記念のプレゼントとして10%引きにしてあげるわ!」と言ってくれたりもしたので、つい買い物してしまいました(もともとのお値段も非常にリーズナブルなのです)。もう一軒の「Maison Classique Emporium」というお店でも一着購入、今回は古本とレコードと小さいもの以外は買い物していなかったのですが、ハーンベイでいきなり散財してしまいました笑。

Alamode Vintageが入っている、ハーンベイで2番目に古い建物
 レコード屋「B side the C side」ももちろんチェック。けっこう気になる品揃えだったけど、特に今ここで買わなくてもという感じだったし、予算も尽きたので私は買い物しませんでした。

海辺には町のランドマークでもある時計台があり、桟橋も見えました。時計台がある町ってなんとなく好きです。なぜかはわからないけど、いつも時計台がある町は好きになることが多いんですよね。

伊豆あたりを思い出させる風景です



休憩したカフェ「Green Door Deli」も居心地いいし
ケーキもクロワッサンも美味しくてよかったです
そうこうしているうちにあっという間にそろそろバスに乗らないと、という時間。駆け足で回った感じではありましたが楽しかったです。ウィスタブルに行く機会がある方は、ハーンベイまでぜひ足をのばしてみてください、と言いたいですね。

というわけで、バスでまたホテルへ戻り、ホテルから歩いてウィスタブルの駅まで戻り、電車でカンタベリー・イーストまで戻り、カンタベリー・ウエストまで歩いて、そこから電車に乗ってロンドンに戻りました。完全リバース・ルートです笑。それにしても久しぶりで楽しい旅でした。来年はどこへ行こうかなあ。
カンタベリーでもウィスタブルでもとにかく犬ばかり見かけましたが、最後の最後で猫と遭遇

ロンドンへ戻る電車の車窓から。毎年、この時期は菜の花が満開で、いつも旅先で菜の花の絨毯を目にします
■お店情報

<カンタベリー>
The Retro(B&B)
The Refectory(カフェ)
Frocks n Stock (ヴィンテージ、チャリティショップ)
Revivals (古着)
Canterbury Rock(レコード)
The Unicorn(パブ)
Posillipo(イタリア料理)
Monument(ヴィーガン・パブ)
The Chaucer Bookshop(古本)
Vinylstore Jr(レコード)

<ウィスタブル>
The Marine Hotel(ホテル)
The Whitstable Oyster Fishery Co.(シーフード・レストラン&カフェ)
Ossie's Best Fish and Chips (フィッシュ&チップス)
Whitstable Produce Store (カフェ、ローカル食品)
Anchors Aweigh Vintage(ヴィンテージ)
Oxford Street Books(古本)
Revival(60sベジカフェ、アイスクリーム)
The Old Neptune(パブ)
Samphire (創作ビストロ)

<ハーンベイ>
Bay Emporium (アンティーク)
Alamode Vintage(ヴィンテージ・ファッション)
Maison Classique Emporium (ファッション、ヴィンテージ)
B side the C side(レコード)
Green Door Deli (デリカフェ)